住宅の快適性や省エネ性能が重視される中で、壁断熱材の選定は家づくりの品質を大きく左右します。
特に断熱性能を求められるケースでは、使用する断熱材の種類や施工方法を正しく理解しておくことが不可欠です。
本記事では、主要な断熱材の比較を行い、施工方法の違いや選び方のポイントをわかりやすく解説します。
▼この記事でわかる内容
- 壁に断熱材を施工するメリット
- 代表的な壁断熱材を比較
- 壁断熱材の施工方法
- 断熱材選びで失敗しないための注意点
フォームライトSLは、現場発泡させる吹き付けウレタンフォームです。壁の中を隙間なく断熱材で充填できるため、快適な居住空間を作り出すことができます。
フォームライトSLの特徴は以下の通りです。
- 優れたコストパフォーマンス
- ランニングコストが経済的
- 断熱工事と気密工事を同時対応できるため工期はおよそ2日間
断熱材選びに迷われている方は、ぜひ詳細が記載されたカタログをダウンロードしてみてください。
目次
- 1 壁に断熱材を施工するメリット
- 2 メリット①|夏の暑さ・冬の寒さを軽減できる
- 3 メリット②|冷暖房費を大幅に削減できる
- 4 メリット③|結露やカビの発生を防止できる
- 5 代表的な壁断熱材を比較
- 6 種類①|ウレタンフォーム
- 7 種類②|ポリスチレンフォーム
- 8 種類③|フェノールフォーム
- 9 種類④|グラスウール
- 10 種類⑤|ロックウール
- 11 種類⑥|セルロースファイバー
- 12 壁断熱材の施工方法
- 13 方法①|吹付け断熱工法
- 14 方法②|充填断熱工法
- 15 方法③|外張り断熱工法
- 16 断熱材選びで失敗しないための注意点
- 17 注意点①|壁内結露を防ぐ断熱材を選ぶ
- 18 注意点②|経年劣化に強い断熱材を選ぶ
- 19 注意点③|断熱等級の高い断熱材を選ぶ
- 20 まとめ
壁に断熱材を施工するメリット
壁に断熱材を入れると、住まいの快適さが大きく変わります。暑さや寒さをやわらげるだけでなく、冷暖房の効きも良くなり、省エネにもつながります。
ここでは、壁に断熱材を施工することで得られる代表的な3つのメリットを紹介します。
▼壁に断熱材を施工するメリット
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メリット①|夏の暑さ・冬の寒さを軽減できる
断熱材を壁に施工すれば、季節を問わず快適な室内環境が保たれます。外気温の影響を受けにくくなるため、暑い夏も寒い冬も過ごしやすくなります。
とくに夏場は、太陽の熱で壁が熱くなり、室内温度が上昇しやすくなります。断熱材があることで、熱の侵入を大きく防ぐことが可能です。その結果、エアコンの効きが良くなり、設定温度を低くしすぎる必要もありません。
冬は外の冷気を遮断し、暖房で温めた空気を室内にとどめやすくなります。冷え込みが厳しい朝晩でも、室温を一定に保つことが容易です。
メリット②|冷暖房費を大幅に削減できる
壁に断熱材を適切に施工することで、冷暖房にかかるエネルギー使用量を大きく減らせます。冷房や暖房の稼働時間が短く済むようになれば、自然と電気代やガス代も抑えられます。
近年は、光熱費の高騰が家計に与える影響も無視できません。断熱材を入れることは、単なる快適性の確保にとどまらず、中長期的なコスト削減策としても非常に有効です。
メリット③|結露やカビの発生を防止できる
壁に断熱材を入れることは、結露やカビの防止に非常に効果的です。
住宅内で発生する結露の多くは、壁の内部や窓付近の温度差によって引き起こされます。室内の暖かく湿った空気が、外気で冷やされた壁面に触れることで水滴となり、内部結露が発生します。
断熱材を施工すれば、壁の内外で極端な温度差が生じにくくなり、結露のリスクを大きく下げることが可能です。水分が壁内部にたまらなければ、カビの繁殖も防げます。
代表的な壁断熱材を比較
壁に使われる断熱材には、さまざまな種類があります。それぞれに特徴や性能があり、目的や住宅の構造によって適した素材は異なります。
ここでは、代表的な壁断熱材6種類の特徴を紹介します。
名称 |
ジャンル |
説明 |
価格帯 |
ウレタンフォーム |
発泡プラスチック系 |
ポリウレタン樹脂を発泡させてつくる断熱材 |
やや高め |
ポリスチレンフォーム |
発泡プラスチック系 |
ポリスチレン樹脂を発泡させた断熱材 |
やや高め |
フェノールフォーム |
発泡プラスチック系 |
フェノール樹脂に発泡剤や硬化剤を加えた断熱材 |
かなり高め |
グラスウール |
無機繊維系 |
ガラス繊維を綿状にした断熱材 |
安め |
ロックウール |
無機繊維系 |
鉱物などを溶かして繊維状にした断熱材 |
安め |
セルロースファイバー |
木質繊維系 |
新聞紙や段ボール、おがくずなどの天然木質系原料を使用した断熱材 |
やや高め |
種類①|ウレタンフォーム
ウレタンフォームは、ポリウレタン樹脂を発泡させてつくられる断熱材です。「現場吹付けタイプ」と「ボード状の成型タイプ」の2種類があり、用途や施工方法によって選ばれます。
現場吹付けタイプの硬質ウレタンフォームは、建物の現場で直接吹き付けて施工します。構造に合わせて隙間なく密着させやすいため、高い気密性を実現できる点が特長です。
一方、ボード状の硬質ウレタンフォームは工場で成型され、現場でのサイズ調整や切断作業が必要になります。
ウレタンフォームは他の断熱材と比較して価格がやや高めですが、断熱性能が非常に高く、省エネ性を重視する住宅におすすめです。
種類②|ポリスチレンフォーム
ポリスチレンフォームは、ポリスチレン樹脂を発泡させてつくられる断熱材です。軽量で加工がしやすく、扱いやすい点が特長とされています。
主に住宅の壁や屋根などに幅広く用いられていますが、高温に弱いため使用場所や施工環境には注意が必要です。
種類としては、ビーズ法ポリスチレンフォームと押出法ポリスチレンフォームの2つに分けられます。前者はビーズ状のポリスチレンを型に入れて発泡・成形する方式で、後者は連続的に押し出して成形される構造です。製造方法の違いにより、密度や強度にも差があります。
価格帯は、発泡プラスチック系の断熱材の中では比較的安価な部類に入ります。ただし、無機繊維系の断熱材と比べるとやや高めの傾向があります。
種類③|フェノールフォーム
フェノールフォームは、フェノール樹脂に発泡剤や硬化剤を加えて成形される断熱材です。熱を受けると化学反応により硬化する性質を持ち、高い断熱性を発揮します。
優れた断熱性能を持つことから、建物の外側に断熱層を設ける外張り工法に多く採用されています。屋根や外壁面からの熱の侵入を効果的に抑えられるため、省エネルギー性を重視する住宅に適した素材です。
ただし、他の断熱材と比べて単価が高く、コストが大きくなります。導入の際は、予算とのバランスを十分に検討する必要があります。
種類④|グラスウール
グラスウールは、ガラスを高温で溶かし、極細の繊維状にして綿状に仕上げた断熱材です。主に木造住宅で広く使用されており、コストパフォーマンスに優れる点から長年親しまれています。
髪の毛よりも細いガラス繊維が複雑に絡み合う構造により、空気を閉じ込めて断熱効果を発揮します。ただし、繊維の中に湿気が入り込むと、空気層が失われて断熱性能が大きく低下します。
そのため、グラスウールを施工する際には、湿気を遮るための気密フィルムでしっかりと包み込む必要があります。ところが、タッカーで固定する作業中にフィルムが破れてしまうこともあり、施工ミスによって十分な効果が得られなくなるリスクがあります。
断熱性能を維持するには、確実な防湿対策と丁寧な施工が欠かせません。グラスウールは扱いやすい一方で、湿気に弱いという特性を理解した上で使用することが重要です。
種類⑤|ロックウール
ロックウールは、玄武岩などの天然岩石を高温で溶かし、繊維状に加工してつくられる断熱材です。構造はグラスウールと似ており、細かい繊維が絡み合って空気を閉じ込め、断熱性能を発揮します。
主に壁や天井、屋根の断熱材として使用され、優れた耐熱性と不燃性を兼ね備えています。火災時にも燃えにくく、有毒ガスの発生が少ないため、安全性の高い断熱材として評価されています。
価格帯は比較的安価ですが、グラスウールと比べるとやや高めです。
種類⑥|セルロースファイバー
セルロースファイバーは、新聞紙や段ボール、おがくずなどの天然木質系原料を使用した断熱材です。自然素材を原料としているため、環境負荷が低いことが特徴です。
木質なので虫食いなどが気になる点ですが、ホウ酸や硫酸アンモニウムを加え、難燃性や防虫効果を高めているため安心して使用できます。
セルロースファイバーは形がないため、吹き込み施工をした際に隙間から材料が落ちてしまい気密性が低くなるといったデメリットもあります。
他の断熱材と比較して、価格帯はやや高めです。
壁断熱材の施工方法
断熱材は素材だけでなく、施工方法によっても性能が大きく変わります。特に壁への断熱工事では、どの工法を選ぶかによって、気密性・断熱性・メンテナンス性に明確な違いが出ます。
ここでは、主に使われている3つの壁断熱工法について、それぞれの特徴を解説します。
▼壁断熱材の施工方法
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方法①|吹付け断熱工法
吹付け断熱工法は、断熱材を液状または半液状の状態で建物の壁に直接吹き付け、現場で発泡・硬化させる施工方法です。
使用される断熱材には主に硬質ウレタンフォームがあり、発泡後に隙間なく壁面に密着することで、高い断熱性と気密性を同時に確保できます。
吹付け断熱工法の最大の特長は、建物の形状に合わせて柔軟に対応できる点です。柱や配管などの凹凸がある複雑な構造でも、材料が自動的に広がって充填されるため、断熱材の切断や貼り付けといった加工の手間がありません。
方法②|充填断熱工法
充填断熱工法は、壁の内部に断熱材を隙間なく詰め込む施工方法です。壁の柱と柱の間に断熱材を挿入し、その上から内装材を貼り付けることで、壁の中に断熱層を形成します。
コストパフォーマンスに優れており、多くの木造住宅で用いられています。
一方で、施工の精度によって断熱性能にばらつきが生じやすいという課題もあります。特にグラスウールなどの繊維系断熱材は、湿気の影響で断熱性能が低下するリスクがあります。
方法③|外張り断熱工法
外張り断熱工法は、建物の柱や構造体の外側から断熱材を覆うように施工する方法です。建物全体を断熱材ですっぽりと包み込む構造となるため、断熱性・気密性の両面で優れた性能を発揮します。
外張り断熱工法は施工手順が複雑で、熟練した技術者による正確な作業が求められます。外壁材との取り合いや、サッシまわりの納まりを丁寧に調整する必要があり、設計段階からの精度が重要になります。
加えて、断熱材の使用量が多くなる分、材料費や工賃も高くなる傾向にあります。
断熱材選びで失敗しないための注意点
断熱材は一見するとどれも同じように見えるかもしれませんが、実際には素材の特性や施工方法、耐久性などに大きな違いがあります。選び方を間違えると、断熱効果が不十分だったり、数年で性能が劣化したりする恐れがあります。
ここでは、断熱材を選ぶ際に見落としがちな3つの注意点について解説します。
▼断熱材選びで失敗しないための注意点
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注意点①|壁内結露を防ぐ断熱材を選ぶ
断熱材を選ぶ際にまず注意すべきポイントは、壁内での結露を防げるかどうかです。
断熱性能ばかりに目がいきがちですが、結露対策が不十分だと、せっかくの断熱材が劣化したり、住宅そのものの寿命を縮める原因になったりする恐れがあります。
結露を防ぐには、防湿性の高い断熱材を選ぶと同時に、確実な防湿層の施工が不可欠です。ウレタンフォームやポリスチレンフォームのように、吸湿しにくく気密性が高い素材であれば、結露リスクを抑える効果が期待できます。
また、現場吹付けによる断熱工法は隙間ができにくいため、湿気の侵入を防ぎやすいという利点もあります。
注意点②|経年劣化に強い断熱材を選ぶ
断熱材を選ぶうえで見逃されがちなのが、経年劣化への強さです。新築時には十分な性能を発揮していても、年数が経つうちに断熱効果が低下してしまっては意味がありません。
とくに断熱材は壁の内部など、施工後に手を加えにくい場所に使用されるため、長期的な性能維持が重要なポイントになります。
経年劣化にはいくつかの要因がありますが、もっとも影響が大きいのが湿気や圧縮、素材そのものの性質です。グラスウールやロックウールのような繊維系断熱材は、長年の重みによって自重でたわんだり、壁の内部でずれて隙間が生じたりすることがあるため注意が必要です。
注意点③|断熱等級の高い断熱材を選ぶ
断熱材を選ぶ際には、断熱等級を意識しましょう。等級が高いほど断熱性能が高く、冷暖房費の削減につながります。
2025年4月から省エネの観点で建築基準法が改正されたことで、住宅建設の基準が大幅に見直され、これまでの最高等級であった等級4が最低等級になりました。また、断熱等級5から7が新設され、さらに高い断熱性能が求められています。
2030年からは等級5が最低等級になると言われており、断熱性能の高い断熱材を選ぶことが必要とされています。
断熱等級については以下の記事でも紹介していますので参考にしてみてください。
▼関連記事
断熱等級4が最低基準に|2025年4月施工の省エネ義務化の仕様基準を解説。
まとめ
本記事では、壁断熱材の基本から、施工方法や選定時の注意点までを網羅的に解説しました。
断熱材は快適な住環境をつくる土台であり、その選び方ひとつで住宅性能や光熱費が大きく変わります。
家は一度建てたら長く使う資産です。見えない部分にこそこだわり、後悔のない断熱材選びをして、快適で健やかな暮らしを実現しましょう。